働き方改革のポイント③「年5日の年次有給休暇の取得義務」
'2020.02.11
今回は、働き方改革のポイント③「年5日の年次有給休暇の取得義務」について、ご紹介したいと思います。
「年次有給休暇の5日取得義務」とは、年10日以上の付与日数がある場合の措置ですが、正社員のほとんど、またパートや契約社員でも、年10日以上ある場合は対象となります。
労働政策研究・研修機構の調査(2010年)では、正社員の少なくとも3割くらいは、年5日未満の取得となっていました。つまり、これらの労働者を雇用している企業は新たな規制では違法となります。違反となった場合には、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」というペナルティに課せられます。
なお、違法とは言えないものの、もともと完全週休2日制だったのを、「隔月1回の土曜は出勤日」と就業規則を変更した上で、その日を計画年休とするという方法が見られますが、法律の本来の趣旨とは沿わない方法と言えます。
働き方改革が徐々に浸透していくなか、働く従業員や求職中者にとって、働きやすい職場環境か否かが重要な選択肢になりつつあるのは、周知の事実となっていますが、企業としては、いかにして自社に適した取組みを見出せるかがポイントになっていきます。
「なぜ法制化されたのか」「企業にとってのメリットとは何か」「どのように準備をすればよいか」これらに照らして考えてみる必要があります。
今回のテーマである「有給休暇の取得義務」でみてみると、まず、「なぜ義務化となったのか」ですが、有給休暇の取得率について、先進国を中心に実に9割以上となっている中、日本では50%にとどまっているという現実です。その背景には緊急時でないと休みが取りづらいという暗黙の縛りがあるのも原因の一つです。
次に「企業にとってのメリットとは何か」については、計画的に年次有給休暇を付与することで、次のようなメリットが挙げられます。
・仕事の生産性向上
・企業イメージの向上
・優秀な人材確保
・モチベーションの向上
昨今の人材不足において、企業のイメージアップとともに離職率の低下にもつながります。このように有給休暇をしっかり取ることで、「働くときには働き、休むときには休む」といったメリハリをつけた働き方が、従業員、そして企業に活力を与えてくれます。
そして「どのように準備をすればよいか」ですが、取り組み易いのは、年次有給休暇の計画的付与を制度化することです。同制度は、有給休暇のうち、年5日を超える日数については、労使協定を結べば、計画的に付与できるようになり、企業一斉やグループごと、個人ごとと方法も柔軟に取り組むことができるなど、取得率も飛躍的に向上します。
導入することにより、従業員にとっては、気兼ねなく有給休暇が取得できると同時に、企業にとっても、労務管理上、計画的にコントロールできるようになります。
単に法改正に対する備えというだけでなく、働きやすい職場環境の構築の一環として運用し、健康経営に結び付けていくことは重要だと考えられます。
いかがでしたか?次回は、④「月60時間超の場合の割増賃金率を中小企業も50%以上とする」について、ご紹介します。お楽しみに。