働き方改革のポイント⑤「労働時間の客観的把握の義務化」

今回は、働き方改革のポイント⑤「労働時間の客観的把握の義務化」について、ご紹介したいと思います。


2019年4月1日から、労働安全衛生法の改正によって、「従業員の労働時間の把握」が義務化されていますが、その目的は、適切な勤怠管理・労務管理行うことによって、長時間労働や過重労働を防ぎ、従業員の適正な健康管理と安全な就業環境の提供を実現するためです。


以前からも、厚生労働省のガイドラインで求められていましたが、対象外とされていた管理職や専門技術者などの健康や安全が懸念されていました。そこで、今回の働き方改革の関連により、これらの方たちも含めて労働時間の客観的把握の義務化が法制化されたということです。


  • どこからどこまでが労働時間?

では、義務化された労働時間の範囲とは、どこからどこまでなのでしょうか。それは、「労働者が使用者の指揮命令のもと、労働者の行為が使用者から義務付けられたと評価できるかどうか」によって判断されます。

また、純粋に業務を行っている時間のみではなく、以下のような時間も指揮命令の下で行われたものであれば、労働時間に含まれ把握が義務化されていますので、注意が必要です。

・朝礼、体操、交代時の業務引継ぎ、など

・業務終了時の掃除時間

・指示待ち時間(手待ち時間)

・会社の指示による研修、教育訓練受講、など


  • 対象者はどんな人?

労働基準法が適用される全ての事業所(中小零細企業を含む)が対象で、それらの事業所で働くパート、派遣、管理職など全ての労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者を除く)に該当する方が対象となります。


  • 労働時間を把握するために行わなければならないこととは?

それでは、企業が行わなければならないこととはどのようなことでしょうか。それについては、以下のようなことになります。

①客観的な記録による労働時間の把握

タイムカード、ICカード、パソコンのログなど客観的な記録により労働時間を確認し、記録することが必要です。

②賃金台帳への適正な記入

労働日数、労働時間(時間外、休日、深夜)などを適正に記入しなければなりません。

(労働基準法108条)

なお、虚偽の労働時間数を賃金台帳に記入した場合には、同法120条1号により、30万円以下の罰金に科せられます。

③労働時間の記録を保管管理

タイムカードなどの記録データを3年間保存しなければなりません。(同法109条)

なお、同法に違反した場合には、上記同様に罰金が科せられます。

④労働時間等設定改善委員会等の活用

必要に応じて「労働時間等設定改善委員会」などの組織を活用し、問題点やその解消に努めることを求められています。


このように、労働時間の把握義務化により、企業が取り組まなければならない事項は数多くあります。しかし、もし適正な措置を取らなかったらどうなるか、取組上での問題点や疑問点については、労働基準監督署など、各専門家にご相談いただければと思います。


いかがでしたか?次回は、⑥「フレックスタイムの清算期間の変更(1か月→3か月)」について、ご紹介します。お楽しみに。