なかなか進まない「同一労働同一賃金」中小企業の現状は?

働き方改革関連法の施策の中で、2021年4月からは中小企業でも施行される「同一労働同一賃金」、施行まで8か月余りとなった今、現在の対応状況はどうなっているのでしょうか?


日本商工会議所における調査※によると、「法改正の内容自体は認知している」とする企業は7割以上と昨年に比べ確実に認知されてきてはいるものの、「対応の目途がついている」と回答した企業は46.7%にとどまっており、未だ半数以上の企業で対応が進んでいない状況です。

※令和2年2~3月に全国の中小企業4,125社を対象に実施、回答企業数は2,838社

(回答率:68.8%)


?なぜ、対応が進んでいないのでしょうか。その要因としては・・・

①同一労働同一賃金の内容が分かりづらい (50.1%)

②増加した人件費を価格転嫁できない (49.2%)

③非正規社員の処遇改善に充てる原資がない (21.1%)

(注:複数回答)


現状、正社員と非正規社員との待遇差とはどういったものでしょうか。

例えば、各種手当の支給対象を例にあげてみます・・・

①退職手当

・正社員のみに支給 (73.0%)

・正規社員にも支給 (10.8%)

②賞与

・正社員のみに支給 (40.5%)

・正規社員にも支給 (52.0%)

③役職手当

・正社員のみに支給 (78.0%)

・正規社員にも支給 (14.8%)

④家族手当

・正社員のみに支給 (60.4%)

・正規社員にも支給 (9.9%)


次に、同一労働同一賃金には、どのような対応策(予定を含む)が取られているのでしょうか。

①非正規社員の基本給や賞与、各種手当等の処遇改善 (47.5%)

②会社全体の賃金・人事制度の構築・見直し (36.4%)

③正規・非正規の業務内容・配置の見直し (35.8%)

④非正規社員の正社員化 (27.1%)


他方、働き方改革関連法の他の施策の対応状況をみると、年次有給休暇の取得義務化に関しては8割以上が、また時間外労働の上限規制に関しても6割以上が、それぞれ対策済み又は対応中となっていて、同一労働同一賃金が他と比して対応が十分でない状況がみられます。


このほか、建設業や運輸業を中心に、まだまだ人手不足感が続くなか、現在は、世界的なコロナ禍の状況もあり、企業としては、働き方改革関連法の各施策への対応がなかなか進められず難しい状況が続いていますが、まずは現状に即した取組みを一つずつ成し遂げていくことが近道のように感じます。