副業・兼業の労働時間管理、安全・健康管理のルールを明確化①

新型コロナウイルス感染の拡大により、週の実労働時間が40時間以上の人の割合が、拡大前は6割超であったものが、5月には4割強まで下がり、7月になっても5割強と回復しきれておらず、月収額についても直近の報告では3割近くが同様に減少している状況です。

このような状況から、政府では、新しい働き方の定着、大都市一極集中の是正、デジタルトランスフォーメンションなどを掲げ、コロナ禍の影響を踏まえた「新たな日常」における成長戦略の推進が進められています。


そんな中、コロナ禍に加えて、「新しい働き方」に向けての取組みの一環として、9月1日、副業や兼業など複数の職場に就業する人に対する改正労災保険法の施行に合わせて、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されました。

そこで、今回は、1回目として「副業・兼業に関する労使それぞれが負う義務」についてご紹介したいと思います。


まず、現行のガイドラインでは、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは自由であるとの裁判例を踏まえて、企業が、労働者の副業・兼業を禁止又は制限できる場合として、以下の4つを挙げています。

①労務提供上の支障がある場合

②業務上の秘密が漏洩する場合

③競業により自社の利益が害される場合

④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合


一方、改正後のガイドラインでは、副業・兼業を行う場合における、労働者と使用者のそれぞれの負う義務として、「安全配慮義務」「秘密保持義務」「競業避止義務」「誠実義務」に関する説明が追加されています。ここでは、これらの義務が履行されない等の場合に、一定の制限ができる旨が明確化されています。

このうち、特に「安全配慮義務」に関しては、副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者に対して、労働者の全体の業務量や時間が過重であることを把握していながら、何の配慮もしなかった結果、労働者の健康に支障が生じるに至った場合には、使用者は義務違反に問われる旨が明記されています。


そこで、これらの対応策としては、就業規則等において、長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限できるようにする規定を定めておくとともに、これらを運用上においても適切に行えるように対応することが重要ですが、このことについても、改正後のガイドラインでは例示されています。


次回は、副業・兼業を行う労働者に対する確認すべき事項について、ご紹介したいと思います。お楽しみに。