介護福祉の社会福祉法人「持ち株化」~経営基盤の強化~

特別養護老人ホームや訪問介護などの高齢者施設や、児童養護施設や保育所などの子ども施設を運営する社会福祉法人を対象として、厚生労働省は、持ち株会社のような機能を有する別法人を立ち上げることを認める方向で進めており、概要は今夏までにまとめ、早ければ来年2020年の通常国会に社会福祉法関連法の改正案を出すとしています。

(背 景)

現在の制度では、社会福祉法人が合併することはできますが、経営統合する際の権利関係や、統合時の会計処理などが難しく、年10~20件程度にとどまっているのが現状です。

また恒常的な問題点として、人手不足と投資効率の悪さが挙げられます。例えば介護職は重労働なのに低賃金と決して人気の職業とは言えず、2018年度の有効求人倍率は3.90倍と新規採用は容易でないのは明らかで、現状では限られた人材を効率よく活用する必要性に常に迫られています。

また社会福祉法人は、比較的、中小規模が多いところ、各施設ごとに法定の設備が必要であるなど、投資効率の問題もあります。

(法改正の効果)

上記の背景を踏まえて、法改正により、一つの法人のもとで経営が一体となれば、人材や資金のやりとりが容易になります。例えば、人材面では介護施設の事務担当者に余裕ができたら、同じグループ内にある保育所の仕事をしてもらったり、保育を手掛ける複数の法人を傘下に置き、採用や研修をまとめることもできるため、人材の効率化が図れます。

また資金面でも、法人税が非課税になる社会福祉法人の内部留保の金額は、全国で1兆円を超えるとも言われていますが、これを新たな制度では、グループ内にある法人間での資金のやりとりは認められる方向であるため、施設を増やす必要がある首都圏の保育所に資金を回すといった取組みもできるようになります。さらに経営者側としても、持ち株会社なら社会福祉法人ごとの独立性も保たれるため前向きに考えやすくなります。


既に2017年から始まっている医療の分野では、「地域医療連携推進法人」の仕組みにより、「医療設備の効率的な導入」や「医薬品の共同購入」などで効果を上げています。

来年以降、医療の事例を参考とした社会福祉法人のグループ化が進み、大きな再編が見込まれますので、まずは、これらへの対応の準備に何が必要かを整理していくことが第一になるのではないでしょうか。→人材採用

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